『新宿駅 最後の小さなお店 ベルク』 井野朋也

e0028123_19432566.jpg新宿駅東口の地下にある、15坪のベルクという個人経営のファーストフード店をコンサルする押野見喜八郎さんいわく、店舗数3,746店のマクドナルド、4,141店のすかいらーくグループなどは、外食産業において多大な功績を残すと共に、ロボットのようなマニュアル型接客と徹底した調理の効率化による簡便料理を蔓延させた。

一方で、このベルクはその対極をいくかのように、個人店として、血の通った、生身の人間同士の触れ合いのある接客サービスと、きちんと手作りされた心のこもった料理で勝負している、と評している。 

そして私が驚くのは、店の経営に関する指標を惜しみなくしっかりと書いてくれていることだ。 例えば、材料のコストは、ソフトドリンク、フード、アルコール、おつまみ、物販 の5種類に分けて売上構成比とコスト比率を挙げている。

1日の売上げは55万円を超え、平均来客数は1,500人、材料コスト42.5%、家賃は7.5%、水道光熱費4.5%、消耗品費3.2% など、数字がきれいに公開されている。 逆算すれば、坪単価が8万円を超えることも分かる。

また、店の経営者として、駅ビルオーナーから契約をめぐって立ち退きを迫られる問題を抱えていることにも堂々と触れている。 権力と資本だけでいいものが作れるわけではない、人の満足はもっと地道な努力から生まれるものだ、と主張して譲らない。

この本は、明らかに著者が後に続く個人経営をめざす人たちのことを考えた思いやりに満ちた、熱い一冊だと思う。 個がもっと尊重され、個性のある個人経営店の時代がやってくることを希望し、後進のために次の「4つ武器」を提言して締めくくっている。

1.未経験であること。
2.同志。
3.助言者。
4.多額の借金。
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by Hhisamoto | 2010-10-05 19:38 | ■えせ文化人(本、映画・・)
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