『リング』 百田尚樹

e0028123_14153719.png「ヨシオ、君はこの試合に勝利することで、敗戦で失われた日本人の自信と気力を呼び戻すのだ」 カーンは白井義男に自らのすべてを注いで世界チャンピオンに育てた。世界タイトルマッチのチャンスを与えたハワイのプロモーター・日系二世サム一ノ瀬の日本に対する想い。また、晩年に重い認知症を患ったカーンに家族として献身的に尽くした白井義男夫妻の心。

・・そして、ファイティング原田の登場。
同時代の怪物たちと、彼らに立ち向かうサムライたち、パスカル・ペレス、ポーン・キングピッチ、エデル・ジョフレ、矢尾板貞雄、関光徳、海老原博幸・・。日本の高度成長期のボクシングは、世界チャンピオンが8人しか存在できなかった時代。現在とは比較にならない希少価値があり、テレビの視聴率が50%を超えた時代だ。

この本はノンフクションといってもストーリーと成り得る時代の流れがあり、そのバックグランドに存在する人としての逸話が詳細に語られる構成に引き込まれる。全編どこをとっても面白く読めるので、どのかの部分だけが印象に残っているとは言えない。私にとってはすべてが面白い。

私がボクシングジムに通っていた1980年前後、TBSのボクシング番組の解説は郡司信夫さんと白井義男さんの名コンビで決まっていた。子どもだった私の頭に歴史的な記憶が残るのは、大阪で開催された万博(EXPO70)からであり、この本に描かれているようなボクシングシーンを見ていない。目にしていたのは、貫録のついた体をゆすって歩くかつての名選手やボクシングジムの会長たちだった。著者の百田尚樹さんは私より3歳年長の方なので、私の知りたかった時代をこの本で十分に語ってくれている。
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by Hhisamoto | 2011-09-03 14:15 | ■えせ文化人(本、映画・・)
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