『オバマも救えないアメリカ』 林壮一

e0028123_7473866.jpg一部の富裕層と一般的教育も受けることができない多くの貧民層が存在するアメリカ。 大きな格差のあるピラミッド社会の問題は、まさに明日の日本を予言していると思える。 著者の林壮一さんはそうした状況のアメリカに身を置いているルポライターなので、彼のルポには切迫感を強く感じる。

「ロスアンゼルス国際空港からハイウェイ105を7マイル弱、東に進みセントラル・アベニューで高速を降りると、WATTSの地名が書かれた小さな看板が出てくる・・」このセントラル・アベニューこそは全米でも屈指の危険な貧民街。「しょっちゅう殺人事件が起こり、黄色い肌の人間などは身ぐるみ剝されてに決まっている」街だそうだ。

1980年代後半に私が南カルフォルニアに住んでいた時、道に迷って高速を降りてこのWATTSに迷いこんだことがあった。私が乗っていたオンボロのビュイックがもしこの場でエンストでも起こしたらどうしようか、とハラハラしながら街を通った経験がある。WATTSのことはよく知らなかった私でも、その街の異様な雰囲気にすぐに気付かされるものがあるほどの恐怖を感じる街だったことを覚えている。

「ゲットー(貧民窟)で育つと教育が身に付かないだろう。手っ取り早くカネを稼ぐ方法として、いつの間にか犯罪に手を染めている。罪の意識が無いうちに、どんどん深みにはまっていくのさ・・」  筆者は、こんな街で生まれ育つ人種にもスポットを当てて、黒人のオバマ大統領がどれほど期待されているか、などをルポしている。

また、ボクシングが好きな私としては分かりやすい、元ジュニアフライ級の世界チャンピオンで、このクラス最強とうたわれたマイケル・カルバハルというメキシコからの移民3世の生きザマを例に出している。 世界で初めて軽量級にして1試合のファイトマネーが100万ドルを超えた伝説のボクサーであり、2006年に国際ボクシング殿堂入りを果たした人物である。 しかし、そのカルバハルでさえも酒の力を借りずに生きていけない現実が書かれている。
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by Hhisamoto | 2011-09-11 07:47 | ■えせ文化人(本、映画・・)
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