リリー・フランキー「東京タワー」

e0028123_22141533.jpgこの「東京タワー」を読んで思い出した本がある。
私が30歳前後に読んだ石川好さんの「ストロベリー・ロード」という自伝小説だ。

1988年に出版された「ストロベリー・ロード」は、文筆家の石川好さんが、自ら暮らしたカリフォルニアのストロベリー農場での青春期の話しを記したものだった。 私が同じくカリフォルニアでコンピュータソフトの仕事をしていた時に、ロスのダウンタウンにあった紀伊国屋で、円換算以上のマージンがのった金額で入手した記憶がある。 

当時、アメリカというどでかい国の片隅で心細い想いをしていた独身の私は、この本にずいぶんと励まされた。 言語に始まるあらゆる壁に対しての閉塞感は、もうひとつ何かの希望を失ったら耐えられないのではないか、と考えてしまうほど私の前に高くそびえ立っていた。 しかし、まったくの同じ土地で、先達である石川好さんが同じように悩み抜き、それを糧に今があることを赤裸々に語ってくれていた。 

その語り口の特徴は、目の前に繰りひろげられる現実を書き、それに対して自分はこう思う。 自分はこのように考える。 と感じるままを、あるいは意思を明確に表していることだ。 この点がリリー・フランキーの「東京タワー」と通じるところがある。 石川好も、リリー・フランキーの「東京タワー」も、どちらも自分の心の感じたままを表現している。 世の中の人が何を言おうと、自分の思いはこうだ! という強い言い切りがある。 リリー・フランキーは短編より長編で本領を発揮している、と教えてくれた方がいたが、その通りだった。

めまいを覚えるほどに立ちはだかる、どうにもならない現実を
「ぐるぐるぐるぐる。ぐるぐるぐるぐる。」 と彼は表現する。

そして彼は、母を敬慕する思いを力強くどこまでも表現する。 

「オトンの人生は大きく見えるけど、オカンの人生は十八のボクから見ても、小さく見えてしまう。 それは、ボクに自分の人生を切り分けてくれたからなのだ。」...
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by Hhisamoto | 2005-12-11 17:57 | ■えせ文化人(本、映画・・)
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