バロン吉元の傑作劇画「柔侠伝」の主人公・柳勘太郎の背中には『覚有情』 という刺青がデカデカと彫ってある。 決して伊達を気取るためにものではない。 六道の凡夫の中において、自身を軽んじ、他人を重んじ、悪をもって己に向け、善をもって他に与えんと念(おも)う者有り。 と漫画の中では語られている。
『覚有情』 とは、語源を調べると、菩薩や阿修羅に並ぶ厳然とした仏教用語であり、悟りを求めて修行する姿勢を示唆しているらしい。 この漫画を古本屋から探し出して読んだのが、もう十年も前になるので、流行(はやり)とは程遠いし、相当古い本のはずだ。 しかし、折にふれて本の記憶と、語られていた言葉がよみがえってくる。 今日も娘に贈る本の選定を考えていた時に、ふと思い出した。 講道館柔道の創成期に、加納治五郎と袂を分けることになった柔術家の父子から話しが始まり、その後の三世代に渡る男の生き様を描いている大河ものだ。 この漫画、話しとしても相当おもしろいし、今でこそ総合格闘技などと称して一番強いのは・・・などとやっているが、その手の格闘技に関する含蓄がすでにテンコ盛りになっていることに驚かされる。 また、男として、人間としての生き方が描かれている。 おそらく著者のバロン吉元がテーマにしたのはそのあたりであり、柔道や格闘技は男を語る上での味付けと言ってもいいはずだ。 だからこの柔侠伝は、テレビにかじりついている格闘技オタクに向けた安っぽい漫画ではないのだ。 クリスマスイブの夜だというのに、私はいったい何を思い出しているのだろうか?
by Hhisamoto
| 2005-12-24 21:18
| ■えせ文化人(本、映画・・)
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住み家: 東京都国分寺市
生まれ: 1959年 しし座 大切にしている言葉: 「吾、唯足るを知る」 探しているモノ: おいしいカレーライス 求めているモノ: ホンモノ、魂のある言葉 以前の記事
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