素材の味を生かす料理

e0028123_22571062.jpg東海林さだおさんは漫画家だが、食に関するエッセイ「丸かじり」シリーズを、私の知るだけでも20冊以上書いている。

この人の着眼点が奇抜で、どうにも面白い。
たとえば、「スティックを食べよう」と題した一編がある。
まずここで語られるのは、「皿の上の食べ物はすべて寝ている」という氏の『格言』から始まる。
言われてみれば確かにその通りで、皿の上の食べ物はたいてい寝ている。
立たせて盛り付けられているサンマの塩焼きはありえないし、ステーキも、エビの天ぷらも寝かしつけられている。 ライスやスパゲティは集団で寝かしつけられている、と言うのだ。

ところが、一つだけ寝かしつけないで、起こして盛り付ける料理が ”野菜スティック” だそうだ。 野菜スティックだけは、コップみたいなものに差し込まれて、全員が立っている。 確かにセロリもニンジンもキュウリも、みんな立っている。

そのうちのニンジン一本が長く突き出ていたりするのは、トランプ手品の時、手品師がその札を取らせようと、扇形の札の一枚を突き出すのと同じように見えてくる。 誘われるようにその一本を引き抜いてポリポリかじると、思いがけず、生の野菜そのものの味に触れ、ふと、ふる里の田舎を思い出したりすると言う。

さらに、野菜サラダだと、レタスと玉ネギとキュウリが一緒に口の中に入る食べ方だが、野菜スティックは、ニンジン一本を食べ終わるまでは、違う野菜が絶対に口の中に入ってこない。 それぞれの元来の味を純粋に味わうことになり、「ヘェー、こういう味だったんだ」とあらためて感動するのだそうだ。

あれを、料理と呼ばないプライドの高い方もいるだろうが、そんな理屈はこの際、関係ない。
「素材の味を大切にした料理がモットー・・」などの売り言葉を口にする料理人は多いと思うが、そうだとすれば、こんなに素直に生野菜を素のままで、食べる気にさせることができるだろうか? ひょっとすると、究極の盛り付けかもしれない、と思ってしまう。

この本、その他にも、スタバでオットセイ化(「アウ、アウ・・」)したおじさんを描いた、「おじさん”スタバデビュー”す」など、思わず紹介したくなる話しがテンコ盛りだ。
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by Hhisamoto | 2006-05-06 23:41 | ■B級グルメ
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