立花隆 『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本』

e0028123_16462.jpg他者の作品を書評するコーナーは、週末の新聞の文化欄を始め、多数存在するが、この本は、「立花隆という人の思考回路を通すとこんなふうに映っていたのか」、という新たな発見と驚嘆がある。

どの断面を切り取ってもその例となるので、いくつかを示す。
■春名幹雄『秘密のファイル』
8月15日が近づいた日本では、今年も戦争論議(最近は靖国論争)が盛り上がっているが、この本では、終戦直後からの歴代日本の首相の名前をあげて、アメリカCIAと取引した内容が暴露されているらしい。 ノーベル平和賞まで受賞した佐藤栄作がCIAとこれほどまで関係が深かったことには、立花氏も驚いている。 極めつけは昭和天皇が沖縄を取引のカードとして、マッカーサーに差し出した秘密メモが詳細に記されているという。 そして、アメリカには未だに公開されていないファイルもあるという。 それは「大きな問題にならない程度に風化されたものから、少しずつ教えてあげるよ。」とアメリカ側から言われているような気がしてならない。 もっと日本政府側からの自律的公開はできないものか、と思ってしまう。

■N・グリフィン/K・マスターズ『ヒット&ラン』
1989年にソニーがハリウッドの名門コロンビア映画を買収した時、何も知らなかった私などは、日本企業のグローバル化もいよいよ本格化してきた、などと平和な思いをめぐらせたが、この本によると内実は180度異なり、ソニーはとんでもないババを掴まされたことになっていて、ソニーは恥ずかしくて公にしたくないような最悪の詐欺に等しい目にあったことが記されているらしい。 その題名が『ヒット&ラン』というのも面白い。

■プーラン・デヴィ『女盗賊プーラン』
立花氏をして「読み出したら止まらない。一晩で上下二巻を一気に読んでしまった」と称している。 被差別カースト民に生まれ、ほとんど犬以下の扱いを受け、ありとあらゆる屈辱と虐待を受け、やがて盗賊団に身を投じ、自分を虐待した連中に復讐をとげる。 義賊の女首領としてインド北部を荒らしまわり、警察官を含む二十数名の権力者を射殺して尚「人は犯罪と呼ぶかもしれない。だがそれは、私に言わせれば正義なのだ」と言い切った。 1983年、彼女に手を焼いた政府当局との間に司法取引が成立して、彼女は死刑にならずに投降する。 その後、貧民層の圧倒的支持を受けて国会議員になるなどの波乱万丈の人生を、文盲の彼女の語りおろしで本になっているという。 この本の発刊当時、目に触れながらも読まなかったことを思い出して後悔した。

書評集を書評する、ということは「他人のふんどし」をさらに品評するようで、情けない気もするが、この書評集に関しては圧倒的なレベルの高さがある。  また、理解しやすく平易であることをもって良しとする親近感のあるインテリジェンスもありがたい。
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by Hhisamoto | 2006-08-13 22:22 | ■えせ文化人(本、映画・・)
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