化学物質との付き合い方 2冊

レイチェル・カーソン著 「沈黙の春」 (Silent Spring)

e0028123_235497.jpg化学物質のデータベースを扱う仕事に就いて、まだ日が浅い私は知らなかったが、長く化学の分野にたずさわる諸先輩でこの本を知らない人はいない。 人間が、動植物を生産するために利用した化学薬品が、破壊の種として自然界を駆け巡り、ふたたび人間に襲いかかることになる、と今から40年以上前に具体的な警鐘をならした名著とされている。

しらみの駆除などに、頭から白い粉をかけられている終戦直後の日本の写真を目にしたことがあるが、そのDDTや除草剤のIPCなどの話しから始まり、発がん性や死に至る有害性について述べられている。 説得力を得るための事例としては、アメリカでの異変を例にしたものが多い。 広大な農場に、セスナ機で空から農薬を降らせていた国で起きた数々の凄惨な実例を挙げている。 大国になるために、結論を急いだこの国が支払った代償について述べられているようにも読めた。

そして最終章でカーソン女史は、「・・その行きつく先は、禍いであり破滅だ。 もう一つの道は、あまり人も行かないが、この分れ道を行くときにこそ、私たちの住んでいるこの地球の安全を守れる、最後の、唯一のチャンスがある。」 と述べている。

半世紀が経った今、人類はしかるべき安全への道を選択したことになっているのだろうか?


安部司 著 「食品の裏側」
著者はこの本で、「しかるべき安全への道を歩んでいるか否か?」 を自己評価しているのかもしれない。

e0028123_23543441.jpg元・食品添加物の専門商社のトップセールスマンだった著者は、自らが生み出した『ドロドロのクズ肉に、30種の添加物を加えて蘇らせたミートボール』が、ある日、妻が用意した食卓に並ぶのを目にする。 そして、自分の子どもたちがおいしそうにそのミートボールをほお張る様子を見て、思わず「ちょっと待て!」とミートボールの皿をあわてて両手で覆ってしまう。

ペットフードにするか廃棄していたクズ肉を蘇らせて、スーパーの子ども向け大ヒット商品にしたミートボールの例のほかにも、この著者は数々の輝かしい商業的成功例を持っていたが、家族に食べさせられないものを世の中に広めていた自分の行為が、軍事産業の「死の商人」と同じように思えてしまい出す。 

そうなると、自分の住む街にアトピー性皮膚炎の子どもが多いことさえも、その責任の一部が自分にあるようにまで思えてきて、罪悪感にさいなまれるようになる。 しいては新たな「目覚め」と認識するようになり、会社を辞めるに至る。

自らの生きる道を潔く選択した著者の声は全編によく表現されているし、かつ専門知識とあいまって内容も分かりやすく伝わってくる。 例えば、コーヒーフレッシュが、牛乳からできていると思って利用していたら大間違いであることも再認識させられた。 あれは、植物油に水を混ぜて、添加物で白く濁らせて、さらに調整剤等を混入してミルク風に仕立てたものだそうで、一滴の牛乳も使われてはいない。 

言われてみれば、乳製品が常温であんなに日持ちするわけがないのだが、世の中にあまりに多く出回っていると、何の疑問も持たなくなる我々人間の感覚は怖い。 恩恵も多大な化学物質との付き合い方を、私も、もっと真剣に考えていきたい。
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by Hhisamoto | 2006-09-16 23:48 | ■えせ文化人(本、映画・・)
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