熊谷達也 『邂逅の森』

e0028123_163153.jpg私が今年読んだ中でいちばん面白かった小説、といったら間違いなくこの「邂逅(かいこう)の森」。 

大正期・第一次大戦前後の東北地方に生きる『マタギ』の生き様を描いた内容だが、人間の存在が生き物としてどうあるべきかを示しているような生々しさがある。 心をじかに触られるような不思議な感動を味わえるのは、人間を動物として描いている部分があるからだろうか。

山本周五郎がいま生きていれば、こんな作品を書くのではないかと思わせてくれる。 しかし、著者の熊谷達也氏は、私より1歳年上だけの1958年生まれ。 同年代がこんな小説を書くのかと思うと、さらに興味深い。

話しは、マタギとして生きる男・松橋富治を通して人間の本分が描かれている。 マタギの本質や、女との交わりは動物のごとくもあるが、人間が集団で生きていくためには掟(ルール)が必要なことを悟り、生き方を決めていく富治がいる。 初恋の相手・文枝とは結ばれることなく、別の女と添い遂げる富治の生きることへの一途さと潔さも、男らしさという形容を超えていると思える。

『迷いが生じた時は、山の神様が教えてくれる。
ある時は動物に姿を変え、またある時は木々や森となり、風にも雲にも変化する。 ありとあらゆる空間に偏在しつつ、その時のマタギにとって最もわかりやすい姿になって助けてくれるのが、山の神様の実体である。』 これがこの小説のテーマ。 

頭で考えるのではなく、自分の直感を信じる。 もっと五感で感じたことをもとに行動する。

スケールの大きな本を読んだ後は気分がいい!
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by Hhisamoto | 2006-12-21 11:56 | ■えせ文化人(本、映画・・)
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