斉須政雄 『調理場という戦場』

e0028123_2133870.jpgこの本の中で、『料理人と仕事』(木澤武男著)という本には血液の言葉が詰まっている。 料理なんて俺には関係ないよ、と思う人が読んだとしても、きっと参考になるでしょう。 職業や時代を超えて当てはまる言葉がたくさんある。 と斉須政雄さんが紹介している。 しかし、その斉須さんが著した 『調理場という戦場』という本にも、まったく同じことが言えると思った。

23歳でフランスに身ひとつで渡り、一店目から12年かけて合計六店舗で働く。 その間には、厳しい労働環境の店もあったし、3ツ星レストランである「タイユバン」まである。 その12年間の体験談が、店ごとに順を追って語られているので、著者・斉須政雄さんの技量の向上や、心情の変化が理解しやすく、とてもおもしろい。 

もちろん斉須政雄という人柄があってのことだろうが、赤裸々で、仕事に対する執着心がにじみ出ている。 特に一店目の段階では、理屈抜きで乗り越えなければならない状況があり、とても興味深かった。 1時間も寝る時間を与えられずに働き通したり、早朝からオーナーと共に市場へ買付けに行くが、フランス語がしゃべれないゆえの無言の往復を繰り返したことなど。 そして、自らを「けっして行儀のいい人間ではなかった」というように、納得できない相手への攻撃的な態度なども、この世界で生き残るための渇望の表れだと思えた。

この斉須政雄さんは濃密な12年間をフランスで過ごしたのち日本へ戻り、1992年から東京三田で「コート・ドール」という店のオーナーシェフとなっているという。 そして「勝負はお客様と自分だけ。 それが、いちばんシビアで怖い勝負。 お店どうしの競争などではない。」と言い切る。 この人の料理を一度味わってみたくなった。
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by Hhisamoto | 2007-01-27 21:27 | ■えせ文化人(本、映画・・)
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