城山三郎訳 『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』

e0028123_23563354.jpg3月22日に亡くなられた城山三郎さんといえば、経済界を舞台にした小説。 特に実在の人物をモデルにした小説や歴史小説が有名だったが、城山さんが英語で書かれた本の翻訳をしているのに気づいた。 それがこの 『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』。 キングスレイ・ウォードというカナダ人実業家によって書かれたこの著名なこの本は知っていたが、城山さんが訳していることを私は知らなかったので、この機会に再読してみた。 

この本は、実業界で成功したビジネスマンの父が、後を継ぐことになる息子に向けてのアドバイスが、題名通りの30通の手紙形式で書かれている。 息子が大学に進学することに対することから始まり、息子を後任として自らは引退するまでの長い時間の中で綴られた30通の手紙文だ。

生真面目に読み進めていくと、カーネギーのような一昔前のビジネス啓蒙書のにおいがして、あまり面白いとは言い切れない部分もある。 しかし、最終章でもある30通目などは含蓄が深く興味深かった。 人は引き際の努め方がいかに大切であり、難しいものかが伺い知れる内容だ。 また、最後のページには、紀元50-120年頃の哲人エピクテートスの、次の言葉を引用して、人としての生き方を伝えている。

 「宴席で作法を守るように、人生の作法を守ることを忘れてはならない。 ご馳走がまわってきて、自分のまえに来たら、手を伸ばして、礼儀正しく一人分を取る。 次にまわっていくのをとどこおらせることのないように。 まだまわってこないうちから欲しそうにしないで、自分のまえに来るまで待つように。 子供についても、妻についても、地位についても、富についても同じことである。」

実際には、身近にいる息子を前にして手紙を渡していたとは思えないので、倉本聡が、『前略、おふくろ様』、『拝啓、父上様』としたように、日記や回想録をまとめたものかもしれない。
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by Hhisamoto | 2007-04-28 23:56 | ■えせ文化人(本、映画・・)
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