『フレンチの達人たち』 宇田川悟 著

e0028123_23261428.jpgそれらしいフレンチレストランに行った記憶といえば、恵比寿ガーデンプレイスの「タイユバン・ロブション」くらいしか思い浮かばない私にとって、この本は新鮮だった。

石鍋裕、三國清三、村上信夫、根岸規雄、ジャック・ボリー、井上旭、ジョエル・ロブション、上柿元勝、斉須政雄、北島素幸、高橋徳男、鎌田昭男、熊谷喜八、勝又登、平松宏之 の16名の代表的シェフの料理と生き様について書かれたルポルタージュ。

登場する日本人のシェフたちは、まだ日本に手本となるフレンチレストランが存在しなかった時代に、当然のごとくフランスへ渡り、そして差別の中を手探りで模索する体験を同様に持つ。 そして帰国後に、街場のレストラン、一流ホテルのレストラン、オーベルジュ、レストランチェーンの経営など、それぞれの道に進む。 成功者たちであることには違いないが、自分の中に貯めこんだ貯金の使い道が少しずつ異なる点が興味深い。

また、フランスでの生活が長い著者は、ミシュラン・ガイドブックの厳格さと中立性について以下のように紹介している。  『フランスにある約5万軒のレストランの中から、ミシュランに掲載されるのは約1割、さらに星を与えられるのがその内の約1割だ。 頂点に君臨するエリートの3ツ星はたった二十数軒。 フランス社会と同様、食の世界にも厳然たる階層が築かれている。 かつてミシュランの星を奪われたために自殺したシェフがいたし、星を獲得するために政官財に四方八方手を尽くしたが、諦めざるを得なかったシェフもいたという。』  日本にも、今年の11月から日本版ミシュラン・ガイドブックが発刊されるというので楽しみだ。

さらに著者は、フランス料理が数ある世界の料理の中で王道とされるだけの奥の深さなどをもっている、と説明している。 このあたりの洞察の深さも面白い。 たしかに日本料理、イタリアンなど数種のレストランを抱える大手ホテルのレストランの総料理長といえばフレンチシェフがその座に居ることが通例だ。 しかし、私の弟が勤めていた赤坂全日空ホテル(今は外資が参入してANAインターコンチネンタルホテル東京となった)には唯一中華料理の総料理長が存在する。 この中国料理「花梨」の総料理長・麥 燦文(ばくさんぶん)氏が厨房にいる時の料理はずば抜けてうまい。 文句なくうまい! とてつもなくうまい!!

私は35歳の時、弟に勧められてはじめてこの「花梨」で、当時の彼女と食事をすることになったが、そのおいしさに驚いたことが忘れられない。 メニューが奇抜なのではなく、通常の中華料理のメニューがチャーハンに至るまでおいしいのだ。 これにはたまげた。

でも今は、その時の彼女がもっとおいしいチャーハンを家でちょくちょく作ってくれている。
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by Hhisamoto | 2007-07-26 23:26 | ■えせ文化人(本、映画・・)
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