アラン・グリーンスパン 『波乱の時代』

e0028123_21264281.jpg私の嫁さんが、子どもの小学校でおきた「給食費の不払い問題」にえらく憤っていた。 費用負担に困窮する家庭に配慮した措置を逆手にとって、給食費を払わずにすませてしまおうとする保護者がいるのだ。 罰則がないルールなら平然と破る。 私はその人物についての話しを間接的に聞くだけだから腹が立つだけで収まるが、嫁さんはその人物の顔を知っている。 平然と自分の衣服に金をかけ、外食をして旅行を楽しんでいる姿を知っているから、その厚顔さに私の何倍も憤懣がつのるらしい。

そんなこんなも、根源のひとつは経済問題なのだ。
そして、経済には理論と思想があり、哲学もある。 この本はそれを教えてくれるだけの明快な内容があって面白い。 アラン・グリーンスパンは、いわずと知れたアメリカの連邦準備制度理事会(FRB)議長を昨年までの18年に渡って務めた経済と金融のかじ取り役だ。 私が在米中の1987年にFRB議長に就任してから、大統領は何人も変わったが、この人は不動だった。

まだ、上巻しか読んでいないが、久々に知的な刺激を与えてくれる本にめぐりあった気がする。 たとえば、グリーンスパンが影響を受けたというアイン・ランドという人物のことが描かれている。 鋭い分析力、強い意思、合理性こそが最高の価値だと一貫して通す姿勢をもっている点は、グリーンスパンと価値観が一致しているとみるが、アイン・ランド氏はさらに深い思想をグリーンスパンに吹き込むことになる。

その一つはアリストテレスの哲学からくる倫理学、つまり、各人には生まれつき高貴な性格が備わっており、この潜在的な高貴さを活かすのが人間にとってもっとも重要な義務だとする考え方。 人はみな自由な意思をもっている。 資金の拠出を拒否した場合はどうするべきか。 民主主義社会に法の支配を適用するとき、公共の問題のほぼすべてにおいて、何らかの意見の不一致があることが前提になっている。 しかし、その妥協は、文明の発達の代償であって、原則の放棄ではないという。
・・「給食費の不払い問題」は想定の範囲だったのだ。

圧倒的な英知が全編にみなぎる。 論理的で核心をつく話しが無数にある。 本を読んだだけでは青臭いと言われるかもしれないが、私はアメリカ合衆国が(日本より)意思をもった理論によって構築されてきた国だと思えてしまう。
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by Hhisamoto | 2007-12-07 21:26 | ■えせ文化人(本、映画・・)
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