カテゴリ:■えせ文化人(本、映画・・)( 106 )

知らなかった 『ビッグイシュー』

e0028123_21271927.jpg地下鉄九段下で下車、九段郵便局から俎板橋(まないたばし)を渡る通勤路に、なにやら薄汚い身なりの男が雑誌を持って立っている。 

これが、イギリスで1991年に始まったホームレス自立支援プロジェクト『ビッグイシュー』の日本版であることを、私はつい最近、茂木健一郎の本で知った。 どこからか拾ってきた雑誌に値段をつけて売っているのだろう。 誰があんなものを買うか、とそれまでの私は思っていた。 そして、たまに雑誌を買う人たちを見て、不思議に思っていた。

一方的な金銭支援ではなく、寄付でもない。 働くことによる収入の道をつける自立支援プロジェクト『ビッグイシュー』は2003年から日本へも導入されているという。 知らなければ嫌悪感をも抱く自分の在り方に少なからずショックを受けた。 自分は、ホームレス救済を切実な社会問題として考えたことがあるのか? 自分がその身でないことでセーフティエリアにいるとでも思っているのではないか? 外見で人間を判断しない、などとは思い込みだけだった? 認知された社会制度がなければ人にはやさしくできないのか? ・・・自分への疑問が堰を切ったようにあふれた。
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by Hhisamoto | 2009-02-08 21:25 | ■えせ文化人(本、映画・・)

さだやす 圭 『ああ播磨灘』

e0028123_2211297.jpgひと昔前に、けっこう気に入っていた相撲漫画、『ああ 播磨灘』(さだやす 圭)というのがあった。

やたらと強い横綱なのだが、暴言を吐いたり、礼儀を疎んじるなど、どうにも素行がよろしくない。 特に愛宕山理事長との確執があり、協会とも折り合いが悪い。 しかし、各力士はなんとかこの強い横綱に土をつけることを目指して、必死に挑むので、播磨灘の取組みは常に異様な熱気を帯びる。 悪役なのだが、その横綱が負けるのを見たがるファンで、土俵は大いに盛り上がる。 
・・・この横綱は、まさに「朝青龍」そのものだなぁ などと思いだしてしまった。

若麒麟の処分が「除名」ではなく、退職金も出る「解雇」となった。 この処分に対して世論はやたらと厳しい。 大麻に対する世間の目が、欧米の社会に比べて日本が厳しいのは非常にいいことだと思う。 しかし、若い人間の立ち直りに期待を寄せず、角界浄化のためには社会的に葬るべきだ、と言わんばかりのマスコミや、にわかコメンテーターの盛り上がりには、魔女狩り的な怖さを感じる。

正論は時に勢いがつき過ぎて怖い。
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by Hhisamoto | 2009-02-02 22:15 | ■えせ文化人(本、映画・・)

映画 『きみに読む物語』 The Notebook

e0028123_20181578.jpgこの映画は、ニコラス・パークスというアメリカのロマンス作家のベストセラー小説(The Notebook)を映画化したものだそうだ。

時代背景は第二次世界大戦前後のアメリカ南部の小さな町。 休暇を過ごしに夏だけ都会からやって来る17歳の令嬢・アリーが、地元の製材所で働く青年ノアと出逢い、恋に落ちる。 しかし、娘の将来を案じる両親に交際を阻まれ、都会へ連れ戻される・・・。 無邪気に少しでも長くそばにいたい二人の想いが伝わってくるシーンが多く、話しの先行きが知りたくなる。

これだけだと身分の違いを乗り越える普通の恋愛ドラマだが、この話しの本題は、平凡なひとりの青年が一生涯を賭けて恋に生きる姿を映し出している物語なのだ!

街なかでのカーチェイスやマシンガンをぶっ放すアメリカ映画に飽きたひとには、この手の人間くさくてアミカブルな映画がおすすめ。

『アンフィニッシュ・ライフ』  『歓びを歌にのせて』  『ギルバート・グレイプ』
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by Hhisamoto | 2008-10-08 00:06 | ■えせ文化人(本、映画・・)

『赤めだか』 立川談春

e0028123_21381841.jpgこの本の一番最後の章「誰も知らない小さんと談志」が泣ける。

「そんなことはしなくていい。 あのな、談志は一家を構えて、たくさんの弟子をとって、独立して立派にやっている。 今更俺のところに来なくてもいい。 あいつは・・・、今のままでいいんだ」 柳家小さんの丸い仏様のような柔和な顔が浮かぶようだった。


立川談春という人の奇特さは、立川談志の弟子であるにもかかわらず、なんとこの柳家小さんと桂米朝という二人の人間国宝に稽古をつけてもらっていること。 (それぞれの稽古に至る場面が妙におもしろい) 思い切りのよさとまわりの人間に助けられ、老齢の師匠を担ぎだしてしまう若気の至り。 スリリングな感じさえする!


それから、二ツ目に昇進する際に黒紋付、袴、名入りの手ぬぐいを作らなければならなくなったが、手元には5万円しかない。 この時、談春は競艇でひと儲けして一式を作ろうと考え、戸田競艇場に行くが、男度胸の一発勝負ができなくなるくだりがある。 このシーンがまた臨場感にあふれている。 

勝つことを意識した勝負に、喉がヒリつき、目がくらみ、船券を買いに体が動かない精神状態におちいるのだ。 レース場のスタンドの椅子に座ったまま、六日間連続で朝の10時から夕方の4時まで自問自答を繰り返す。 戦って負けたならまだしも、戦うことすらできない不甲斐ない自分と戦っていたのだ。 もう、博打で儲けるとか着物を買うとかはどうでもよくて、とにかく5万円分の船券を買うことが本人にとっては重要なことになっていた、というこの気持ちはすごーく分かる。

結局、この談春、70倍の大穴を当てて40万円の配当を手にする。
あまりのことに競艇場のトイレで吐いてしまうが、腹一杯の焼肉を食べて、吉原に行く。 翌日、一年分溜まった家賃30万を払うことになり、手元にはまた5万円しか残らなかったので、再び戸田競艇場へ出陣。 5万円の一点勝負の結果はお約束通りのハズレをくらい、父親の前に土下座して着物を買ってください、とお願いする・・・

このあたりは落語そのもののようでおもしろい。
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by Hhisamoto | 2008-07-02 21:37 | ■えせ文化人(本、映画・・)

「生き方の原則 - 魂は売らない」 H.D.ソロー

水泳のジャパン・オープンで、スピード社製レーザーレーサーの水着を着た選手が日本新記録を5つも出した。 こうなると日本に限らず、選手たちは北京オリンピックで、何を着て試合に臨むかが当然問題となる。

解決策はひとつ。 オリンピック出場選手は全員「裸」で泳げばよいのだ。 オリンピック委員会が裸で泳ぐことを規定してしまえばいいのだ。 「水着が泳ぐのではない、選手が泳ぐのだ」と言うのなら、全員裸になればこれ以上の公平はないのではなかろうか。

環境問題の原因である現代の行き過ぎた生産競争が取り沙汰されている昨今、原点回帰を図るべく古代ギリシャオリンピックのように裸で競技すればよいのだ。 こんなことを言うと「それじゃあ、テレビ放映できない」とかいう意見が当たり前のように出る。 なぜかテレビを中心に(=経済中心に)物事が考えられるのだ。 ・・・ものごと、何を基準に考えるかだけだ。  

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e0028123_815429.jpg自分の気に入った仕事に心ゆくまで専心している人が非常に少なく、ほんの少しのお金や名声に目がくらんで、本来の仕事を捨ててしまう人が多いことを嘆いていたソロー。

ヘンリー・デイヴィッド・ソローは19世紀前半期の人なので、すでに1.5世紀を経過しているが、経済中心に心を奪われる社会形態は存在していたようだ。 ひとが群れ、社会が形成される時、必ずといってよいほど経済が社会構造を侵食し、人々の心のあり方をも支配してしまう歴史が常にあるらしい。 

ソローが生計を立てるために行っていた仕事は、学校教師、家庭教師、測量士、庭師、農民、ペンキ屋、大工、石工、日雇い労働者、鉛筆製造業、作家、詩人、など多岐にわたったらしいが、一貫した人間の自由を実践する生き方とその思想が、インドのマハトマ・ガンディーや、アメリカのキング牧師、ケネディーらに影響を与えるほどの力を持っていたことに今さらながら驚きを覚える。 不動の真理が存在するようで心がときめく!
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by Hhisamoto | 2008-06-08 08:17 | ■えせ文化人(本、映画・・)

NHKドラマ『トップセールス』の夏川結衣

e0028123_23174512.jpgきれいなお姉さん、夏川結衣のことは知っていたけれど、大人の美しさ・涙・哀愁 ・・・、このドラマでは最高にいい表情をしていると思えた。

話しは、(私にも記憶のある)昭和50年代の高度成長期後半から始まる。 まだ男性中心の企業構造が当たり前の風潮の中、懸命に働ける場所を求めて、自動車セールスの世界に入る。 そして「女に車が売れるはずがない」という常識を覆してトップセールスマンに成長する。
やがて舞台は、バブルの時代とそのバブルがはじける80年代後半と90年代に入る。

ちょうど86年から91年までの5年間をアメリカで過した私にとっては、このバブル期の日本の状況が分かっているようで、実はよくわからない時代だ。 日本からアメリカに来るビジネスマンがやたらと羽振りが良かったり、ラスベガスでの異様な散財ぶりなどは、どう考えても普通じゃないと思えるかたわら、「自分はこのアメリカの片田舎で何をあくせく働いているんだろう」と取り残される感覚があった。 そのせいか当時の日本を舞台にしているこのドラマが楽しめた。

エンディングに流れる平原綾香の主題歌も時代の情感とマッチしてよかった。
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by Hhisamoto | 2008-06-01 21:44 | ■えせ文化人(本、映画・・)

はまりTVドラマ『ミディアム』

e0028123_1694786.jpgいま、寝不足に悩まされるほどハマっているドラマがこれ!

アリゾナ州検事局にパートで勤める平凡な主婦アリソン・デュボアが、サイキック(霊能力)を駆使して事件を解決していく。 と、そこまで聞くとよくあるドラマ話しとなってしまうが、このアリソン・デュボアなる霊能力者は実在の人物であり、半生を綴った著書あると聞くと、よりドラマの見方に深みが増すのは私だけではないはず。 実際、ストーリーもプロットもよくできていて引き込まれる。
私のお勧めは、レッスン1の第5話「訪れた危機」。
魔女狩りのごとく証人喚問を受ける主人公アリソン・デュボアが、見ている私たちの想像をはるかに上回る言動で危機を乗り越える。 (思わずうなってしまうシーン!)

それから、全編に普通の5人家族の生活感がただよっているところがいい。
毎朝、3人の子どもの朝食と学校への送り迎えから始まり、夫と協力し合いながら暮らす平凡な一家族の様子がある。 (嫁さんは、年代も家族構成も似ているうちの家族とダブらせて見ているらしい。)  どんな超能力があろうとも、人間らしい喜怒哀楽のある暮らしに勝る幸せはない、というのがこのドラマの底辺に流れるテーマということか。


e0028123_1716363.jpgまた、私と嫁さんが長期ハマっているドラマは、なんと言っても『ER』。 (もう、10年以上になるのでは)

主人公を定めず、ひとつの救急病棟を舞台に、ドクター、看護師、事務、そして運び込まれる患者に、それぞれの人生模様が交錯する。 仕事、恋愛、結婚など、人生観や価値観が乱れ飛び、人間の生き死ににドラマが凝縮されている、といった感じ。 なんとも生々しい感覚に夫婦でハマっている。

最近、日本語で聞きながら、字幕を英語で見ている。 雰囲気だけの意訳がほとんどなく、翻訳が忠実でしっかりしているので、英語の勉強になる。
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by Hhisamoto | 2008-04-13 16:07 | ■えせ文化人(本、映画・・)

三浦綾子 『塩狩峠』

今年は桜も早めに咲き誇り、4月には葉桜が残るのみ。
予定していなかったが、末娘の小学校の入学式に参列することができた。 私は3人目の入学式にして初めての参加だったが、(聞いてはいたが)父親の参加が多いのに少々驚いた。 (良いことだが)皆さんそんなに余裕をもって仕事をしているのだろうかと思ってしまう。 ビデオ撮影にもみんな余念がない。 聞けば授業参観日にもビデオ撮影は盛んで、先日は教壇側に立ってビデオを回していた父親が教師から注意されていたという。

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e0028123_19294310.jpg初めて小説を読んで涙したのは、たしか中学生も終わりの頃に読んだ三浦綾子の『氷点』だったと記憶している。 殺人犯の娘であることを知った陽子が、雪道をひとり行く姿を思い浮かべ、その足取りはどんなに重かったことか・・と、ノーテンキで純だった中学生は想いを馳せたのだ。

それ以降、三浦綾子作品を読んだことはなかったが、先日風邪でダウンした際、活字中毒気味の私はすぐにテレビに飽き、何か読み物がないかと部屋の中を探し回った。 その時、嫁さんの持ち本の中に「塩狩峠」を見つけた。

自分に誠実に生きる主人公・永野信夫は、ねじれた心の同僚にも自らを賭して接する。 また、生まれつき足が悪く、肺病とカリエスを患うふじ子を愛している自分を確認し、結婚を決意する。 しかし、結納を明日に控えた信夫が乗った列車が暴走する。 手動ブレーキに飛び乗った信夫が全力で列車を止めようとする。 スピードは落ちるが危険な塩狩峠にさしかかるまでに完全に止めなければならない。 信夫は躊躇なく身をもって列車を止める。
・・ 全編、その圧倒的な人間愛に押しまくられる。

明治42年、人命救助のために殉職した長野政雄という実在の人物がモデル。 鉄道職員であり、キリスト教の信者であったこの方の実話にもとずく話し。 テーマは「ひとに義人なし、一人だになし」という聖書の言葉。
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by Hhisamoto | 2008-04-07 19:25 | ■えせ文化人(本、映画・・)

中村うさぎ 『さすらいの女王』

e0028123_21282152.jpg「中村うさぎ」という方をはじめて知ったのは昨年のNHKのトーク番組だった。

たしか、ゲストとして呼んだ夫婦に対して質問などをして、二人で乗り越えた苦労話しや面白エピソードを引き出していく番組の司会をやっていた。 司会でありながらも彼女が発する言葉の端々に、「この方はナニ者?」と一風変わった魅力を感じることがあり、記憶に残る。 そして、この中村うさぎ氏とは、港区役所から税金滞納で銀行口座まで差し押さえられながら、借金してでもブランド品を買いまくり、美容整形は顔の若返りから豊胸に至るまで施すツワモノであることを知る。

さらにゲイの男を夫に持つ結婚生活をしていて、よそ様の夫婦生活を云々するより数段面白い話しがドバドバと溢れ出てくる方であることを知り、近年のNHKのキャスティングもなかなかやるな、と感じさせてくれたことを覚えている。

そんな中村うさぎ女史の書きモノを初めて読んで、またまたビックリ!
この方の生きることへの探求心がしっかりと記されている。

子宮筋腫やガンの気配に脅かされながらも、人工的な若さと引き換えに、自らの欲望の重荷をこれからも背負っていく覚悟はできている、と明るく語るうさぎ女史に、ただならぬポジティブさと人生哲学を見出す読者は私だけではないはずだ。

さらに、氏自身のあとがきや、その氏を取り巻く方の解説に至るまで面白い。

かつてアントニオ猪木は、「ほんとうの借金とは五十億円以上しないとダメだ」
「それじゃ、絶対、返済できないじゃないですか」
「そうでもないよ。 借金が五十億を超えれば、『自己破産だけはしないでください』とカネの貸し主が頼んでくるようになる。 つなぎ融資もしてくる。 だから当座のカネには困らないもんだ。 その内、借金を肩代わりしてくれる人が出てくる。 カネに関しては、人生なんとかなるよ。 だから、ほんとうにやりたいことを、誰が何と言おうとやりぬくことだ」・・・

この解説を書いた佐藤優氏は、「外務省のラスプーチン」と異名をとったロシア情報分析のエキスパート。 その佐藤氏が参議院議員だった頃のアントニオ猪木から教わったという「ほんとうの借金」についての話しを持ち出して、うさぎ女史にエールを送っている。
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by Hhisamoto | 2008-03-30 21:27 | ■えせ文化人(本、映画・・)

フランツ・カフカ 『変身』

e0028123_11123055.jpg「ある朝、グレゴール・ザムザが不安な夢からふと覚めてみると、ベッドのなかで自分の姿が一匹の、とてつもなく大きな毒虫に変わってしまっているのに気がついた。・・・」で始まり、家族にさえ疎まれながら最後は自室の暗闇で衰弱して死んでいく。 読後感はと問われれば、どうにも重苦しい話し。

フランツ・カフカという人は、生涯を一役人として暮らしながら作品を残したというが、社会的な名声や表現する舞台を得なかったことから、粛々と平凡に市井として生きる民としての、心の内面を表したのかもしれない。

e0028123_11345644.jpg同じく比喩の利いた話しでは、ジョージ・オーウェルの『動物農場』がある。 豚が法律を制定し、農場を支配する様子を描いていたが、この話しからは社会を構成するヒエラルキーや支配の成り立ちを比喩していることがはっきりと読み取れる。 しかし、カフカの『変身』は、もっともっと心象的に人間の深い部分を表現しようとしているんだろなぁと思えた。

どうも最近、新刊本との出会いが少なく、この手の20世紀初頭モノに立ち戻っている。 
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by Hhisamoto | 2008-03-08 11:11 | ■えせ文化人(本、映画・・)