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魚河岸の町・築地の雰囲気

都営大江戸線「築地市場」駅は、地上に上がる前から魚くさい匂いが鼻をついてくる。

e0028123_128435.jpg午前中であれば、市場の中の食堂でめしが食えるのだが、仕事でこの街を訪れる私はたいていそのタイミングを逃している。 今日も夕方4時をまわったので、築地場外の門跡(もんぜき)通りを歩いてみた。

そこには、通りに背中を向けてカウンターでめしを食わせる店が数件ある。
きっと夜には、一杯やる人で賑わうんだろうなと想像できるエリアだ。 年季の入った市場職人風のおっさん連に混じって、若い女性客もいる。 むしろここでは、私のような背広姿の方が場違いだ。

その一軒で『まぐろのほほ肉ステーキ丼』(900円)を注文する。 
まぐろのづけ丼も魅力的だったが、ほほ肉ステーキの珍しさを味わうことにした。

e0028123_129045.jpg適度に焼いたほほ肉はやわらかく「ステーキにした」といえる食感だったし、レタスときざみネギがいいバランスを出していた。 焼き汁をタレとしてかけていたようだが、場に合わないほど上品なうす味だったので、私は目の前の醤油をかけて食べた。

こんな場面の記述は、椎名誠だったらもっとダイナミックに楽しそうな表現をするんだろうなあと思えるし、中島らもだったら、さらに異次元に連れていってくれると思う。 しかし、私の最も敬愛するエッセイの書き手は、『不良ノート』など多くの著書がある百瀬博教だ。 著述家としてはマイナーかもしれないが、男らしい孤高とした感性が好きだ。 百瀬さんだったら、魚河岸の町・築地の雰囲気をどのように表現するのだろうかと思ってしまう。
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by Hhisamoto | 2006-04-28 22:08 | ■B級グルメ

ヌキテパ 田辺年男シェフのこと

4月13日の「新・どっちの料理ショー」は、スターシェフ500円丼(DON)-No.1グランプリ決定戦 と称され、リストランテ・ヒロの山田宏巳シェフと、ヌキテパの田辺年男シェフが出演していた。

山田宏巳シェフの「豚肉団子丼」は肉汁とたれの香りが相まって、実にうまそうだった。 
それに対して、田辺年男シェフの作ったものは、得意の「土」のソースを使った焼きはまぐり丼。 おまけに、ゴハンはスイカの汁を使って炊き、ホウレンソの根やニンジンの葉まで使う奇想天外なものだった。

しかし勝ったのは、田辺シェフの『焼きはまぐり丼』だった。
高橋英樹、春風亭小朝、増田惠子 といった芸能人は、オーソドックスにおいしいものは食べなれているはずなので、目からウロコの「未知なる味」に期待を寄せることは容易に想像がついた。 この田辺シェフの発想と度胸は規格外なのだ。 「思い知ったか!」とテレビに向かって言いたい気がした。


e0028123_23382991.jpg田辺シェフの「ヌキテパ」は五反田の閑静な住宅街にあるフレンチレストランで、私はひと昔ほど前に、ボクシングジムの後輩・福井氏と友人の斉藤氏らの合わせて4人で行ったことがある。 

田辺シェフはプロボクシングの経験を持っていることから、その日の午後に行われる世界タイトルマッチの話題になった。 昼の客が引けた店の中にテレビを出してきてくれたので、ボクシング中継を見ながら田辺シェフと話しをした。 しかし、田辺シェフの最近の興味はなんといってもゴルフだそうで、ボクシングの試合を見ながらゴルフの話しを聞いた奇妙な時間のことを覚えている。 

フランス料理を追加して食べ、騒ぎ、高級ワインを5、6本空けた。 おまけに飲みすぎた私ら4人は、従業員の休憩室のようなところで昼寝をきめこんでしまった。

夕方の客が入り始めた頃、ようやく起きた私らは、眠たい目をこすりながら帰ることにした。
チェックを頼むと、ドレスを着たきれいなフロアレディが10万円のレシートを持ってきた。 
クレジットカードで支払いを済ませたが、高級レストランで飲み放題・食べ放題の半日を好き勝手に過ごした割りには安くしてくれたのか、それとも迷惑料が含まれていたのか、酔った私にはよく分からなかった。

あの頃は、なんであんなアホなまねができたんだろうか?
田辺さん、ゴメンナサイ。
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by Hhisamoto | 2006-04-25 00:40 | ■B級グルメ

辰巳芳子さんのこと

何気なく見たNHK「きょうの料理」の特集モノで、辰巳芳子さんというおばあちゃん料理研究家のことをはじめて知った。 だしから作るスープに興味があったので、本当に何気なくつけたテレビだったが、やがて正座して見なければならない深いものがあることに気がついた。

1924年生まれというから82歳になられるはずだが、この方は「料理」というものを通して、人としてのあるべき姿が見えてきているのではないかと思えてしまう。 

たとえば、辰巳さんの本には、料理のことはもとより、真理をつくような話しから、人に対する思いやりの言葉まで幅広く出てくる。 もともと、床に伏せった父に与える滋養のために考案されたことが根底にあるらしい。 「愛」という言葉にも多く出会える。 しかし、抽象的であったり、精神論であったりすることはない。 料理の方法は、素材と調理法の組み合わせを中心に体系化した説明すらある。 一見古いようで、新しい時代にも欠くことのできない手法。 親しみがありながらも、手が届かないほど深い含蓄がある。 

また、「食」が人間の生を支えていることから、幼児、学童の給食へ、安全な食を提供し、いら立たず、子供の発育が守られることを願う提言をしている。 そして、つゆもの、スープが、家庭生活をあたたかく守り支える存在になることを真摯に願っていることが伝わってくる。


e0028123_22585588.jpg辰巳さんの本 『あなたのために』 を買った。
私はこの本を何年もかけて読み解き、その一部だけでもまねごとをしてみたい。 たぶん、こういう本は何十年か後に、子供たちが何気なく家の本棚から取り出して読み、ハッと何かに気づいてくれる時がくるのではないだろうか。 

2,600円の本だったが、得をした気分になった。
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by Hhisamoto | 2006-04-15 21:19 | ■B級グルメ

小説への感情移入

主人公が女性であっても感情移入できる話しがある。
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感情移入できることが、小説の面白さを表すごく単純な尺度のひとつであるとすれば、近く映画にもなる山田宗樹の『嫌われ松子の一生』という、川尻松子の数奇な生涯が描かれている小説に、私はしっかりと感情移入ができてしまう。 

主人公の松子が、国立大を出て中学の教師になるところから始まり、トルコ嬢、殺人犯、最後は死に至ることになるが、こういった人生の流転は、自らが招く必然ではなく、ちょっとした歯車の狂いやボタンの掛け違いから起こるのではないかとさえ思えるような、不思議なスリルを与えられて一気に読み進んでしまう。 小説だから描けるのではなく、だれにでも起こりうる可能性がある、という冷めた感覚が読者の背筋を刺激する。 甥っ子の視線と松子本人の語り口が交差するプロットも、さらに時の流れを感じさせていい。 
ただし、自分に元気がない時は、少々重く感じてしまうかもしれない。


e0028123_0195754.jpg小池真理子が直木賞を取った作品『恋』という小説がある。
学生運動が盛んだった1970年代が舞台の官能的な恋愛小説であり、表現も文学的で豊かだと思うが、私は感情移入ができずに、冷静に最後まで読み終えた。 

学生だった矢野布美子が、大学の助教授・片瀬との間に持つ恋愛感情。 その妻である雛子との風変わりな関係。 そして布美子が起こす事件と、25年後に死を迎えることになるまでの時の流れの起伏が叙情的な作品だ。 避暑地のハイソサエティな風景も美しく想像できるし、高揚する恋愛感情などの心理描写も巧みだが、私のような男性読者が求めている感覚とは異なる気がした。

小池真理子作品では、『蜜月』という天才洋画家の女性関係を描いた作品も読んだ。
私にはこちらの方がしっくりときた。


e0028123_0174935.jpg同じく恋愛小説では、江國香織の『東京タワー』を読んだが、やはり私には感情移入はできなかった。 もっとも時代背景がかなり若者風であり、年上女性と付き合う大学生の感覚まで素直に私がフィードバックできなかっただけかもしれない。 

すでに映画化されたが、ほんとうにうける映画が作れると思ったのだろうか。 きめの細かい心理描写がちりばめられた恋愛小説を、2時間の低予算映画に収めて見せようとする魂胆は、さらに理解できない。

もしかすると、主人公が女性であっても感情移入はできるが、作者が女性だと、無粋な男性読者には理解できない細やかな何かがあるのだろうか? 
やはり私のお勧めは『嫌われ松子の一生』です。
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by Hhisamoto | 2006-04-14 23:18 | ■えせ文化人(本、映画・・)

前略おふくろ様

e0028123_23243095.jpg最近はまっているビデオがこれ。 
倉本聰が脚本を手がける『前略おふくろ様』

倉本聰の「北の国から」が好きだった話しを友人にしたところ、それなら「前略おふくろ様」にこそ倉本ドラマの原点がある。 絶対に観るべきだ!との教えをもらったのだ。

このドラマは、1975年から3年に渡り日本テレビで放映されたものだから、私が中学か高校時代の年季ものだ。 まだ、10話くらいしか観ていないが、当時観ていなかったので、懐かしさではなく初々しい思いで観ることができる。 それにしても倉本聰は昔から超長編モノが得意だったことがうかがえる。

下町深川の料亭で修行する板前のサブ(萩原健一)が、山形の母宛てに書く手紙にて、身近で起こる出来事を伝える出だし「前略おふくろ様、今日は・・」などから話しが展開する。 このサブをはじめとした不器用な男の純情と、実は誰もが持つ母親への想い。 この辺りをくすぐられると男は弱いらしい。

坂口良子もまだ初々しくて本当にかわいいし、若女将役の丘みつ子も色っぽくて哀愁に満ちている。 包丁を握る梅宮辰夫や小松政夫もはまり役だし、ピラニア軍団といわれた室田日出男、川谷拓三もいい味をだしている。 

倉本聰のようなドラマ作りをする才人は、しばらく現われないのだろうか?
長ければいいということでもないが、マイクル・クライトンの「ER」のような稀有な創作が観たいと思ってしまう。
宮藤官九郎あたりが意志を継いでくれたらいいのに。
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by Hhisamoto | 2006-04-05 23:59 | ■えせ文化人(本、映画・・)