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ノンフィクション映画とドキュメンタリー映画

実話に根ざした小説や映画が必ずしも輝いているわけではないが、私はノンフィクションものが大好きだ。

小説において、ノンフィクションとドキュメンタリーの「境目」については、トゥルーマン・カポーティに代表されるような試行錯誤が長く繰り返されてきた。 しかし映画は真実以前に書籍を超えられない表現も多く、書籍(原作)を読んでから期待して映画を観ると、がっくりと肩が落ちてしまうことがある。 もちろん必ずしもそうではない。 映画でなければ伝わらなかったであろうと思われるような迫力や表現力を感じることもあるし、映画での結末が原作にアレンジを加えてあり、どちらも興味深かったりすることもある。

e0028123_2211237.jpg少し以前の映画だが、ジュリアロバーツの『エリン・ブロコビッチ』という事実に基づいた話しがあった。 この作品は、映画表現の質の高さと実話だけが持つリアリティが相乗した好例ではないかと思う。 私はこの映画が大好きだ。 企業が排出する6価クロムにより汚染された地域の住民を喚起させ、原告団を組織する実在の女性エリン・ブロコビッチの話しだ。

自身の生活にも窮するエリン・ブロコビッチが、あるきっかけから弁護士事務所で働くことになる。 離婚暦2回、学歴も法律知識もない3児のシングルマザー。 ハッタリと外見にはこだわりをもっていて、きれるとみさかいなく汚い言葉で当たり散らす典型的なヤンキー系。 しかし、そんな彼女が目覚めるできごとに遭遇する。 米大手企業PG&E社が6価クロムによりもたらした水質汚染疑惑だ。 そこから彼女の人間としての戦いが始まる。 そして、エリート弁護士たちも舌を巻く634人から信頼と署名を集め、最終的に和解に持ち込み、米国史上最高額の「3億3300万ドル」(約350億円)を勝ち取るに至る。 (これは1993年に実際に起った訴訟事件だそうだ)

この話しは、ある種のアメリカンドリームの体現だと思う。 人間の可能性の多様さを言い表していて、勇気をもらえる話しだと思う。 (アメリカンドリームは、なにもスポーツや事業成功者だけの話しではないはず)

映画としての表現力のすごさは、監督とジュリアロバーツのキャラクターが作り上げたものかもしれない。 例えばエリン・ブロコビッチに扮するジュリアロバーツはこの映画の中で一切涙はみせない(それが逆に泣かせる)。 「社会的な目上」に対する悪態の数々にも心をゆさぶられるものがあるし、自分自身の体調を崩しても身を粉にする姿もさりげない・・ これがもし男が主人公の話しだったら、おとこの侠気いっぱいの話しだったのかもしれない。

また、いまのDVDには未公開映像の他に、エリン・ブロコビッチ本人や最良の理解者となる弁護士本人などが当時を語る映像が収録されていて、観る者のリアリティをかきたてる。

e0028123_22234840.jpgさらに、実際のエリンブロコビッチ氏もサイトを公開されているのが面白い。http://www.brockovich.com/index.htm

これを読むと、彼女に学歴がないわけでもないことが分かるが、ストーリーに脚色がほとんどないことも分かる。 (グラマーで美人だったことも)
また、このサイトの「フィロソフィー」という項目では、環境保護に対する真摯な意見も述べられている。 連絡をとるためのコンタクト欄もある。 こんな現実との境目もおもしろい。

そのほか、いま私が観てみたいと思っているこの手の映画は、『ダーウィンの悪夢』、アルゴアの『不都合な真実』などだ。
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by Hhisamoto | 2007-03-27 21:19 | ■えせ文化人(本、映画・・)

映画 『ホテル・ルワンダ』

e0028123_8435422.jpg30年も以前だったろうか、日曜の朝「兼高かおる世界の旅」というテレビ番組があった。

世界中を旅して紹介しまくる兼高かおるという上品で健康的なおばさんが、「ルワンダという国はアフリカにありながら常春の国ですのよ!」とナレーションしていた。 それ以来、初めてルワンダという国の存在を知った私のあたまには「ルワンダ」=「いい国」という単純な印象が残されてきた。

しかし、『ホテル・ルワンダ』という映画で語られているルワンダで起こったフツ族による大虐殺は、私の子ども時代の印象を大きく塗り替えるものだった。 しかも1994年という現代に起こっている虐殺であることも切実さを感じさせる。 

もっとも民族紛争は今も各地で起こっているが、映画の公式サイトを見ても、 『おことわり』と称して、「~族」という呼称は、差別を連想させるものとして、現在公式の場では使用されておりませんが、本作では話をわかりやすくするためにあえて使用しております。ご理解いただきますようお願い申し上げます。 とコメントも生々しい。

ニックノルティ扮する国連軍のオリバー大佐が自虐的に発するせりふ、「ルワンダの黒人は、アメリカのニガーでもなければ、フランスの黒人でもないということか。 だから先進諸国は見捨てるのか!」というフレーズが恐ろしい。 日本にアメリカがついていない状況だった場合や、経済的先進国でなかった場合を想像すればいいのかもしれない。
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by Hhisamoto | 2007-03-25 08:40 | ■えせ文化人(本、映画・・)

読み直しの一冊 『柳橋物語』

e0028123_23113944.jpg 「杉田屋の養子になったからといってゆくすえ幸せとは決まらないし、なり損ねたからって一生うだつがあがらないわけではなかろう。 運、不運なんというものは死んでみなければ知れないものさ。」祖父・源六はさとすように言う。 その後の苛酷な運命にも負けずに生きる江戸の娘おせん。 これでもかというような、今でいういじめのような状況にも、純粋な心で生き抜く姿に引き込まれる。

気持ちに迷いが生じた時、パワー不足を感じる時、そんな時に合うのが山本周五郎の一冊『柳橋物語』。

さいごは不器用でも実直に生きてみせるだけ。
人間いつでもはだかで原点回帰する覚悟をもっておかなければいけないと思う。 
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by Hhisamoto | 2007-03-24 23:08 | ■えせ文化人(本、映画・・)

オオカミ犬の話し 熊谷達也と乃南アサ

熊谷達也 『漂泊の牙』
e0028123_11582496.jpg養護施設「日の出学園」の孤児として育ち、動物学者となった主人公の城島郁夫。 野生的な勘と知識を兼ね備え、動物と化してオオカミを追う雪山のフィールドワークは世界の権威をうならせる。 サバイバルナイフ一本でオオカミ犬と格闘する男。 その眼で見据えられると、老練な刑事ですら背筋が凍る。

その城島郁夫の妻がオオカミ犬に食い殺される。 幼い娘を残し、山での闘いに挑む城島に、真相を追う刑事や、真迫のドキュメンタリー作りをめざす女性ディレクターなどの生き様がからむ。 真犯人に迫る後半は、テレビのサスペンスドラマさながらで、テーマ音楽と共に刑事役の船越栄一郎が重なってきそうでおもしろかった。

(でもやっぱり、熊谷達也は『邂逅の森』が最高傑作。 これに尽きると思う。)

そういえば、以前読んだ本にも、オオカミと大型犬を掛け合わせて最強の殺りく犬を作り出す 『凍える牙』 という小説があったことを思い出した。 

乃南アサ 『凍える牙』
e0028123_1203746.jpgこの作品で乃南アサは直木賞を受賞し、警視庁機動捜査隊の音道貴子というキャラクターを作り上げることになる。 普通のOLに近い悩みを持ち合わせながらも活躍する孤高の女刑事・音道貴子シリーズはここから始まった。

この話しも、オオカミと大型犬を掛け合わせて作られたオオカミ犬が、悪の手先となって暗躍する。 そして、そのバックに潜む人間をあばき出すという流れ。 これもテレビのサスペンスドラマの原作になりえる楽しさがある。
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by Hhisamoto | 2007-03-18 10:26 | ■えせ文化人(本、映画・・)