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中村うさぎ 『地獄めぐりのバスは往く』

e0028123_96246.jpgこの夏はこどもたちと過ごす時間を徹底的につくろう! という(ごくありふれた)思いを胸に抱き、2つの家族旅行を敢行した。

その一つは嫁さんが選んだ「きらめき九州4日間の旅」という(ごくありふれた)バスツアーだった。 旅行というものはオリジナリティや出会いがなくっちゃ楽しくない、とかねてより思いこんでいた私には、小旗をひるがえすバスガイドの後について歩き回る自分の姿をイメージすることができなかった。 要するに、出来合いのバスツアーを小バカにしていたのだ。 ところがこれが、私にとって目からうろこのきらめきツアーとなった。

羽田から福岡空港へは飛行機で往き、九州は湯布院・別府・高千穂・阿蘇・熊本・長崎をバスでめぐるツアーだったが、最も感心させられたのがこのバスガイドさん! 柳川から霊験あらたかな高千穂まで、巡る土地にまつわる神話や逸話をとうとうと語って聞かせる姿は語部だし、歌を聞かせ、アドリブで笑いをとるちょっとしたエンターテイナーでもある。 個人的に話しを聞いてみると、バスガイドの教科書があり、それを頭に叩き込むところから始めるそうだ。 さらに経験を積んだベテランは、教科書を超えた知見を加えてオリジナリティと味をかもし出すらしい。 明るい話しだけではなく、長崎の原爆話しに至るまで、土地を語り、人物を語り、歴史を語る。 幅広い老若男女の客を相手に、バラエティに富んだ知的な話しとユーモアで数日間の相手をする。 バスガイドがプロフェッショナル以外の何ものでもないことを思い知らされた。 バスツアーを軽視していた私が無知でした(失礼!)。

ふたたび福岡空港からの帰りの飛行機に乗ると、スタイルの良い美しいCAたちの微笑みに迎え入れられる。 素敵な容姿に見惚れながら席についたが、あのバスガイドと比べると、このCAたちにどのような芸があるのだろう?と余計なことを考えてしまった。 (それでも私はCAのおねーさんが好きだが・・)

飛行機で、たまたま私の隣の席になったお爺ちゃんがおしゃべり好きで、東京までの2時間を永延と話してすごす事になる。 よくよく聞けばただ者ではなく、早稲田の中学・高校で剣道師範をされている方で、今回は七段の昇段試験を受けに福岡に来ていたという。 私を気に入ってくれた様子はありがたかったが、この方の声が大きい。 本人は口元に手を置き、声を押さえているつもりらしいいが、とにかく声が大きい。 周りの客やCAたちのいぶかる顔を横目に、剣道の話しから教育の話しなど様々な興味深い話しを多岐にわたって話し続けた。(私はもっぱら聞き役だったが。)

名前も聞かずに羽田で別れたが、面白い出会いだった。

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中村うさぎ 『地獄めぐりのバスは往く』
各章「皆さま、本日は「地獄めぐりツアー」にご参加いただき誠にありがとうございます」から始まり、「浪費地獄」、「借金地獄」、「悪口地獄」、「博打地獄」と、自らの欲望を満たすことと引き換えに味わった地獄をバスツアーにたとえて語るオモシロ話し。 
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by Hhisamoto | 2009-08-30 09:04 | ■えせ文化人(本、映画・・)